みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
しかし、俺の前に大きな壁として立ち塞がったのが桔梗谷家だった。
敵に回せばその世界ではもう生きられない、と言われるほどの権力者が彼女の父。
その目に見えない力に屈したのは事実。とはいえ所詮、俺の頑張りと知識や知恵も足りなかったと思う。
何より、俺の彼女を求める必死さが桔梗谷さんには危うく映ったのかもしれない。
『娘はもう君の知らない透子になってるよ。いい加減、察して帰りなさい。
情けない顔をした今の君に、ひとつ言っておこう。――娘を傷つけるだけの男に、誰が居場所を教えると思う?』
彼の冷静なひと言は、まるで冷や水を浴びたように強烈なものだった。
一切隙のない態度、穏やかな物言いで黙らせるだけの威圧感。彼のそれらに圧され、経験不足の俺はその後は何も出来なかったほどに。
この時に桔梗谷家の不興をかったと父の逆鱗にも触れ、あえなくイギリスに帰国に至ったがもはや抜け殻状態。