みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
今でもひとりでいる時やふとした瞬間、笑顔の透子が蘇えってくることがある。
怒った顔も、泣いた顔も、悔しがる表情も、苦しみを滲ませた顔も、そのどれもが愛しかった。
遠回しな優しさと愛を伝えてくれた彼女。大切なことを忘れていたのは俺だったのに。
“ごめん”や“愛してる”とも言えず、祭壇に背を向けてしまった愚かな自分を彼女は許してくれるのだろうか?
『人を許せた時、同時に自分の弱さを受け入れられると思うの』
誰よりも気高く、誰よりも大らかな心で、短い人生を生き抜いた透子がいつも言っていた言葉。
俺が怒り任せの行動をすればいつも怒ってくれた。なぜ冷静に考えられないのかと。
本当の意味での強さと優しさを教えてくれた彼女を忘れられる訳がない……。