みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
片手には重いiPadや書類の入ったブリーフケースなど盛り沢山で、そのうち腕がちぎれるかもしれない。
しかし、一切フォローしないのが傍らに立つ彼だ。この手厳しさは良い時と悪い時とがある。
女性視点ではヘルプが欲しいところだけど、彼に無駄な借りを作らないのがベター。
15階で停止したエレベーターを真っ先に降りると、左へ旋回したのちそのまま直進。
重役フロアを小走りで駆け抜け、到着したのは専務室。バンと空いた片手でドアを開け放ち、資料をデスクへ勢いよく置いた。
「お、もかった……!」と、つい声に出してしまうほど。
雑然というよりはぐちゃぐちゃ。後ろから視線が痛いけど、私だってデスク上は綺麗を保ちたいタイプなのに。
ただ構う時間も惜しいので、必須のiPadをロエベのバッグに突っ込み肩に掛けた。
「早水さん、行きますよ!」
「貴女が言いますか」と、にべもなく言われる。
――うわっ、かわいくねぇー!
軽く舌打ちものの発言は大人だからとスルーし、ふたりで再度エレベーターに乗り込んだ。