みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
快調なエンジン音が心地よくさせる車の中で、私はiPhoneを取り出すと電話をかけた。
「まりかちゃん!」
たった2コール後に応対したのは、妹ことあかねだ。
「あかね、今日は行けない」
ちなみに20時という伝言は、今夜のパーティーの時間をさしていた。
「ダメよ!」
「そんな横暴な」
「皇人くんが何度も誘ってくれてるのに!」
社交界の花として生きる彼女。まさにパーティーが仕事のメインというべきか。つまり、大学卒業後は花嫁修行中という名の自分磨きに勤しんでいた。
「それなら直接、皇人に行けないって言えば良いのね」
今夜、親族の里村家が主催する懇親会が開かれるのは百も承知。招待状もチェック済みで断りを入れていた。
予想通りというのか。打算的な皇人は、アパレル大手の当社との結びつきを誇示ししたいようだ。
そんなことを態々しなくても、皇人の会社はウチ以上の規模なのに……。
「それに私、これから打ち合わせが」
「そんなの役員なんだから、都合つけられるわよ」
「そんなことしたら、このご時世大事なチャンスを掴み損ねるの!」