みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
「準備を含めてたった数時間。数時間で妹のためになるのよ?
まりかちゃんと一緒に行くこと、叶にも伝えてあるのに!」
電話越しに聞こえる声は今日も優雅で身勝手なもの。キンキン声が疲れ気味の頭に響く。
当然こちらの殺伐とした状況は知る由もない。というより、分かろうとはしないのが彼女だけど。
「叶、叶って……、あかねは高瀬川くんが本命なの?」
「本命って失礼ね。この私が結婚するなら、外見と経済的にも彼しかいないわ。
私にどれだけ貢げるのかで愛を計っているし、もちろん身体の相性もピッタリだもの。まりかちゃんはこれで、叶以外を見つけろという異論でもあるの?」
勘違いと言いたくなる発言だけど、それに値する美貌は備えているのがこの妹。
「……とりあえず、打ち合わせ後にまた連絡するわ」
私とあかねは随分と年齢が違うけれど、それ以上に容姿も性格も価値観もまるで違う。
打算的な性格は里村家の血筋だろうか、と思えてならない発言にはついに頭も痛くなってきた。
「分かったわ。その間に私はエステティシャンでも呼んで今夜のために最終調整するわ。
仕事なんか適当に終わらせて早く帰って来てよ?じゃあねー」
なんてお気楽なのか。電話越しなのに、彼女が満足げににっこり笑っている顔がみて取れた。