みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
お家に呼んだスタイリストさんのお陰で、最新のディオールの濃紺ドレスを纏い、クリスチャン・ルブタンの黒ヒールを履いた現在。
ボブヘアの髪には天使の艶を引き立てるよう、ビジューのヘアアクセが煌めいている。
耳、首元にはパール、手首にはカルティエのダイヤ時計で装着完了といったところか。
「余計なお世話って……、危機感も仕事で無くなってるのね。
それと、今季のブランド・新作発表会に行けなかったのは何件か分かる?」
「え、3件?」
不意の問いかけに私が首を傾げて答えると、鋭い眼差しが返ってきた。
「まりかちゃんは5件も欠席よ!
お陰で今季の受注会でオーダーしてあげたのはこの私なの!感謝してよね!
まりかちゃん、自分のドレスやバッグが増えたのも気づかなかったでしょ?」
選挙演説のような口調で言い切ると、満足そうな微笑を浮かべた目の前の妹。
「“着回し着回し”なんて言わないで、経営者なら景気よくファッション代をもっとつぎ込んだらどう?」