みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
「何よ、お姉ちゃんぶって!ほんと、口うるさいオバサンになったみたい!」
予想通りというか、何というか。自尊心を大いに傷つけられたのだろう。
鋭い眼差しでこちらを睨みながら発狂した妹は、ドレスを翻すとそのまま部屋を出て行った。
「あかねちゃん!」
彼女に頗る甘い母といえば、そんなあかねをおろおろとした様子で追って行く。
嵐が去ったように静まったところで、ひとりロココ調で揃えられた調度品の数々を見渡す。
ちなみにここはビューティールームと銘打った、我が家自慢の仮装ルーム。
母と妹が専属のスタイリストや美容師、エスティシャンなどを呼び、美しくして貰うための部屋だ。
――仕事に追われる私は、こんな時しか利用しない縁遠い所だけど。
「まったく」とひとり嘆息し、やけに広いドレッサーの椅子のひとつを引いて座った。
確かにあかねは美しい顔立ちをしている上、磨き上げた体も色気を放っている。
だけど、どんなに外面を磨いても性格や内面は綺麗にはならないのにと思う。
「悪知恵ばっか働くんだから!」
言い忘れたセリフを口にすれば、不思議と負け惜しみに感じて惨めになってくる。