みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
心臓はバクバクと鼓動を速める中、こんな場面を目撃されて“もうこれで終わりだ”と絶望していた。
「里村社長、どういう事でしょうか?」
「ほんとに良いワケ?“コレ”を手放して」
「ちょ、きみっ」
普段ならば私は犬以下か!とツッコミを入れているが、それどころではない。
「“要らない”と仰ったのは彼女ですが?」
勝手なヤツを制する前に、冷たい声音を聞いて身体は一瞬で凍っていく。
「知らない?」
「何を?」と言う早水は、明らかに面倒くさそうだ。
「まりかはこの7年男日照りって」
この発言には「おいっ!」と声を上げ、皇人のシワひとつないスーツの胸ぐらを掴んだ私。
「ほんとのことじゃん」
「よけーなお世話!」
「誰のためにやってたの?」
「そんなのっ、最初はパパと会社のためだったけど。今は私の」
「そこにもうひとり足したら?素直に」
「っ、」
意地の悪い笑みを浮かべて私と向き合う男の発言は尤もで、グッと言葉に詰まった。