みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
「いい加減にして下さい。私はこれで」
その向こうで、はあ…と嫌味混じりの溜め息を吐いた早水。あからさまに鬱陶しそうだ。
「アンタもアンタ」
そこでようやく起き上がった皇人。男ひとりの重みがようやく消えてホッとする。
「何がでしょう」
その間に彼は私に背を向け、早水と対峙していた。慌てて起き上がると、まずは脱げたヒールを履き直す。
「約束なんて体の良いキープ法だなと」
「事実を言って何が悪い?」
ようやく早水の顔が見えたと思ったのも束の間、その表情は険しさを滲ませている。
年下とはいえ、皇人は大企業の御曹司。彼がこれほどキツい言い方をするのは初めてだ。
「まりかを振るなら綺麗にフッてくれ」
目を見張る私をよそに、隣の皇人は飄々として言いのけた。
「はあ!?何言ってんの!?」
「じゃなきゃ、オマエと偽装結婚出来ない。分かったろ?あんな風にしても、どっちもそそられない」
「当たり前だっての!」