奪取―[Berry's版]
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 あの日から初めて、、喜多は例のビルの前へ来ていた。調査対象である夫人が習い事に通っている、あのビルだ。腕時計で時刻を確認すれば、終了予定時刻である15時前。
 本来ならば、喜多がここへ来る理由は既にない。箕浪の風邪は完治し、体力も回復させている。更に、夫人の浮気相手の目処もほぼ立っており、調査も終盤を迎えていたからだ。
 しかし、喜多はこの場へ来てしまった。あの日から、胸に残る傷の疼きが、喜多の足をここへ向けさせたのだろう。それも、調査に来たときと同様、いつもとは違う風貌で。
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