奪取―[Berry's版]
考えるよりも早く、喜多の身体は動いていた。
「……あ、ありがとうございます」
「いえ」
掴んでいた女性の右腕を、喜多は素早く離す。顔を凝視されぬよう、少し顔を逸らし、足早にその場を去った。女性が追いかけてくる様子はない。相手は、喜多の正体に気付いていないのだろう。自然と、安堵のため息が零れた。
触れた掌が、火傷を負ったように熱い。噛み締めるように、喜多はその手を固く結ぶ。
間違いない、他人の空似でもない。あれは、絹江であった。
何故今頃。いや、何故再び、自分は見つけてしまったのだろう。気付けば、喜多は自問していた。
「……あ、ありがとうございます」
「いえ」
掴んでいた女性の右腕を、喜多は素早く離す。顔を凝視されぬよう、少し顔を逸らし、足早にその場を去った。女性が追いかけてくる様子はない。相手は、喜多の正体に気付いていないのだろう。自然と、安堵のため息が零れた。
触れた掌が、火傷を負ったように熱い。噛み締めるように、喜多はその手を固く結ぶ。
間違いない、他人の空似でもない。あれは、絹江であった。
何故今頃。いや、何故再び、自分は見つけてしまったのだろう。気付けば、喜多は自問していた。