奪取―[Berry's版]
 僅かな沈黙の後、喜多は重い口を開き始めた。ゆっくりと語られるのは、喜多と従兄弟である箕浪との話だった。彼らの少年時代に起きた事件である。

「当時、俺は箕浪をライバル視していた。仲が悪かった訳じゃない。同性で、同年齢。あまりにも近い存在。互いを比べるあまり、気に入らないと感じることも少なくなかった。でも、箕浪の父親は後継者。俺の父親は経営権を放棄した変わり者。同じ祖父を持つ孫であるはずなのに、周囲からの反応は全然違った。俺がどれ程努力したところで、覆すことの出来ない壁があった。従兄弟のことを、大事な後継者だ、御曹司だとそれは大事に扱っていたよ。同年代の友人だけじゃない、大人たちの方がより露骨だった。箕浪自身も自覚はしていたんだろう。だから、努力もしていた。それは、俺も認めてはいたんだ。だから……嫌いにはなれなかった。それに、父親同士、兄弟仲は悪くなかった。俺も、箕浪の父親には可愛がってもらっいた、祖父だって、俺達を差別することはなかったんだ。でも……。今にして思えば、単なる嫉妬心だったんだろうな。子供心ながら」
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