奪取―[Berry's版]
「同じ年の親戚って、複雑よね。兄弟なら、年齢差もあるし、家庭と言う社会の中で自ずと役割分担も生まれる。でも、時折顔を合わせる従兄弟は、また似ているようで別物だもの」

 春花の言葉に、喜多は僅かに口元を緩めてから。言葉を続けた。

「ある日、箕浪が誘拐されたんだ」

 静かな室内に、春花の固唾を呑む音が響く。空になったグラスを、手近なサイドテーブルに置き、喜多は自身の髪を乱暴にかき上げる。この話を、他人に話し聞かせるのは、初めてのことであった。何度も、何度も。擦り切れてしまいそうなほど、自身の中で繰り返し思い出してきた記憶。

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