奪取―[Berry's版]
 両肘をテーブルに付き、掌に顔を乗せた春花が。首を傾げつつ喜多を見つめている。不意に、彼女の口元が緩んだ。

「女がひとりで35過ぎまで生きてきたら、本人の意思に関係なく変わるわよ。それより……前、聞きそびれていたけれど。喜多は彼女と上手くいってるの?」
「彼女?」
「そう。5年前に再会した彼女よ……まさか。あれっきり、逃がしたわけじゃないでしょうね」

 春花の視線が、喜多の左手を捉えていた。その指には、何の装飾品もない。もちろん、薬指にあっても可笑しくない指輪の跡も、ない。彼女が何を探っているのかに気付き、喜多は苦笑を浮かべる。左手を掲げて。

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