奪取―[Berry's版]
 少しだけ肩を竦め、絹江は同意を示す。もちろん、言われなくともそんなことは露ほどにも考えてはいなかった。いや、考える余裕などないと表現したほうが正しいだろう。覚悟を決め、自分から飛び込んだはずではあるが。他人と肌を重ねる行為とはこれほどまでに、緊張を強いられるものだっただろうかと。絹江は思っていた。
 肩に触れる喜多の手の感触。それだけで、心音は更に速さを増す。限界を忘れた機械のように。このまま放置した暁には、故障してしまうだろうかと、いぶかしむほどだ。
 先ほど、喜多が中途半端に下ろしたままの下着が顕になる。既に、絹江が身につけているものは下着だけだ。喜多の掌が、絹江の肌の弾力を楽しむかのように移動してゆく。肩から始まり、腕、掌へと。眸は、絹江を捉えたままに。
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