吸血鬼は淫らな舞台を見る
瑠諏は細い腕から無縁と思われる力を発揮して包丁を握っている村尾の両手を右手一本で捻っていく。
「くそっ」
痛みに耐えかねた村尾は包丁を手放した。
「凶器は渡してもらいました。人間は諦めが肝心ですよ」
瑠諏は包丁の刃から滴り落ちる血を気にも留めず、一気に抜いた。
「まだ諦めちゃいないぜ」
村尾は気障(キザ)ったらしい台詞を吐き、床面まで開口部がある掃き出し窓に頭から突っ込んだ。
バリンと窓ガラスを砕き、体を地面に叩きつけた村尾は起き上がると、アパートから逃走していく。