Bloom ─ブルーム─
高鳴る胸の鼓動を感じながら、彼を乗せて走り出した自転車。

坂道は辛いのに、長谷川大樹が触れる肩に気持ちが集中してしまって、息苦しいのは何のせいなのかわからなくなる。

ドラムの姿はもうとっくに見えなくなっていた。

『やめといた方がいいよ』

『女と一緒だから』

『で、女は?』

また複雑な気持ちが私を息苦しくさせた。

笑ってることが取り柄みたいなはずの長谷川大樹はなぜだか、後ろから一言も発せずにいる。

今、どんな顔をしてるんだろ?

ただ黙って自転車走らせるだけの帰り道。

当たり障りのない話でもすればいいのかもしれないけど、今日に限って何も思いつかない。

だって、頭の中はいろんな気持ちが占領してるんだもん。

坂道を上りきった時、私はこのモヤモヤした気持ちを抱える事に耐えきれなくなり、キーッとブレーキをかけて自転車を止めた。

「はぁ、はぁ」

肩で息をしながら、そっと振り向き、長谷川大樹を見る。

「ごめん、マジできつかった?歩こうか」

振り返れば、長谷川大樹はまたいつもの笑顔に戻っていた。

ううん、戻っていた、っていうのは正確じゃないのかも。

この人は変わらず笑っていたのかも。

でも、私の気持ちがモヤモヤしすぎていて、笑ってない長谷川大樹を勝手に想像していた。

『やめといた方がいい』

『女と一緒だから』

その言葉が頭から離れない。

もしかしたらこの人、いい人のふりして、実はいろんな女の子に手を出して気を引いて楽しんでる?

みんなに優しくして、本当は腹黒いのかも?
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