Bloom ─ブルーム─
「追いかけなかったの?」

長谷川大樹は、寂しそうに笑うとコクンと頷いた。

「男にはやらなきゃならない時がある、って、里花ちゃんの言葉をあのとき聞いてたら、多分追いかけてただろうな。

そしたらもしかしたら今が違ってたかなーなんて考えちゃったりしてさ。

『もしも』なんてあり得ないんだけどね」

そういえば、そんなこと言ってたっけ。

学祭の日。

花火を見ながら……。



もし追いかけていたら、今ごろ長谷川大樹とその彼女は続いてたのかな。

「そのまま終わっちゃって、そのうちその友達と彼女が付き合い出したって聞いてさ、すげーへこんだ。あのときは5キロくらい痩せたよ。へへ」

でも、何もできないまま終わったのって、不完全燃焼っていうか、いつまでも心の中に残るんだよねって言う彼は、

「里花ちゃんはそんな情けない恋しないだろうな」

って笑う。

もしかしたら、もう私にとっての情けない恋が始まっているかもしれないって、知ってか知らずか。

「FRISK食べますか?」

私は握りしめてたままのFRISKケースを長谷川大樹に差し出した。

「おおー助かる。これ、頭冴えるよね。さっき屋上でありったけのFRISK口に突っ込んで逃げてきたからさー。もう持ってなかったんだ」

手のひらに乗せてあげた3粒をすぐに口に放り込む彼。


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