Bloom ─ブルーム─
「ごめん。俺、ちょっとだけ里花ちゃんを利用したよ」

でも、乗せられたFRISKは、彼の口に入る事はなかった。

手のひらに乗せた瞬間、そんな事言うものだから、動揺して震えた私の手が、乗せたFRISKを全て地面に落としてしまった。

「電話切って、屋上から里花ちゃんが自転車置場の方に走って行く姿見つけて、無意識に走り出してた。

1人でいたくなかったんだ。1人で帰りたくなかった。それで」

再びFRISKを手のひらに乗せようとしたけど、蓋を思うように開けない。

指が思うように動かない。

「質問に答えてあげるふりして、本当は俺が聞いて欲しかったのかも。ごめん」

「……いいんです。私、花子だもん。同じ目なんでしょ?」

ふっと鼻で笑う彼は、今、何を思うんだろう?

なんで彼女ふっちゃったんだろう?って?

もう一度電話したらまだ間に合うかもって?

それとも、好きだった大切な思い出が彼女の電話でガタガタと崩れてしまったとか?

バンドやってて良かった?そのおかげでまた彼女とのつながりができたんでしょ?

それともやってなければ良かった?そしたら、こんな複雑な想いを抱えずに済んだ?



──私は、長谷川大樹にとって、どの辺の位置ですか?


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