Bloom ─ブルーム─
学祭のあの夜、

『空気壊さないようにとか、嫌われないようにとか、周りばっかり気にしすぎて、疲れる時、ない?』

『強がって笑って、それが楽しいはずなのに、なんでか突然フッと力抜けるっていうか……』

『周りには友達がたくさんいるはずなのに、スゲー寂しくなるとき、ない?』

そして、強がる私を笑っていたっけ。

でもあれは、私の気持ちを見透かして言ったんじゃなくて。

弱音を吐けない大樹先輩の心を語ったものだったのかも。

「大ちゃんはね、甘え方を知らないのね、きっと。共働きで1人っ子だったから、わがまま言って困らせちゃいけないと勝手に自分で決めちゃってたのかも。

お母さんが亡くなっても葬儀の準備とかで追われて悲しむ暇もなくて、全部落ち着いた時だったかなぁ、1ヶ月くらいして、フラッと1人でここに遊びに来たのよ。

健はたまたま出掛けててね。

ちょうど今里花ちゃんが座ってるそこのカウンターでラーメン食べさせてたら、そのときかけてたラジオからある曲が流れてきてね」

ゆきちゃんはそこで話を止めると、

「里花ちゃんと大ちゃんのお母さんの趣味、似てるのね」

って笑った。

「その時流れてた曲が、今かかってたもので、お母さんの大好きな歌だったの」

私が今『すき』と言った曲が?

だから大樹先輩は驚いた顔をしたの?
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