Bloom ─ブルーム─
「夢を追いかけるんじゃなくて、自分が邪魔になると思って出て行くって言ってるんですか?」

「もちろん、ちゃんとした夢ではあるみたいなんだけど、きっかけはそうね。

新しいお母さんのお腹に赤ちゃんがいるってわかってから、突然だったもの、東京行くって言い出したの。大ちゃんの家なんだから、堂々としてればいいのに」

お父さんと新しいお母さんと赤ちゃんの、新しい家族にとって、自分の存在が邪魔だと感じてるの?

前に言っていたっけ。

『否定も肯定もしない。けど、俺の存在の意味がたまにわかんなくなるんだ』

あれは、そんな大樹先輩の寂しさから出た言葉だったんだ。

周りに友達がいっぱいいても、その心の中は孤独だったんだ。

「里花ちゃんは、裏切らないであげてね」

「え?」

「健はそんな大ちゃんから彼女奪ったりするし。本当バカ息子で。

お母さんは軽い胃潰瘍だって嘘をついていたし、お父さんは浮気してたし。

大ちゃんは人を信じることに臆病になってるのよ。それで、人一倍嫌われるのが怖いの。

だから笑うのね。

でも、ふとした時に、里花ちゃんの前で気を許してることがあって、そんな大ちゃんを見るとほっとするの。

だから、里花ちゃんは裏切らないであげて」

それに対する返事の重さを噛みしめて

「はい」

私は真っ直ぐ答えた。




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