Bloom ─ブルーム─
「健さーん?」

今度はギターの名前を呼んでみる。

すると、窓が開いているのか、風に揺れてカーテンがふわっと開き、そこから青白い顔が飛び出してきた。

青白い顔のその瞳は私を捉えると、すごい目力で威嚇する。

「ひっ、ひ……」

怖すぎて声にならない。

助けて……。

突然!

後ずさりしようとした私の足首を何者かが捕まえる。

「ぎっ、ぎゃあぁぁぁぁ~っっっ!」

一気に出た私の叫び声は、多分町内中に響き渡ったんじゃないだろうか。

「大丈夫!?」

由紀ちゃんが慌てて階段の下まで駆け寄り、私を見上げてくれる。

「で、出た。で、ででで」

ガチガチ震える口元で、お化けが出た!と言おうとした時。

「ぶあっはははは」

という2つの笑い声が頭上から降ってきた。

振り返れば、青白いメイクをした健さんと、手だけ白く塗った大樹先輩がお腹を抱えて笑ってる。

「まったく。女の子いじめるんじゃないよ!」

由紀ちゃんが呆れ顔で厨房へ戻っていく。

私は──……。

笑い転げる2人の目の前で、ヘナヘナと腰を下ろすしかない。

だって、覚悟して入ったお化け屋敷ですら腰を抜かした私が、まるで前ぶれなく起こったこの現実に平気でいられるはずがない。

ダメだ。

足に力が入らない。

「ごめんっ!また歩けなくなった?そこまで脅かすつもりはなかったんだけど」

いや、そのキレイに塗られた手を見たら、結構脅かす気満々だったように感じますよ?
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