Bloom ─ブルーム─
暫く無言で私達は食べ続けた。

ずぶ濡れの2人が何も言わず食べる姿は異様だったと思う。

でも、周りの目を気にかける余裕なんて、私達に残されてなかった。

最後のポテトを同時に掴んでしまうまで。

ポテトが繋ぐ指と指に、ふと笑みがこぼれてしまった。

「いいよ、やるよ」

「じゃあ、半分こ」

分けたポテトは同時に口に運んだ。

「あいつはさ、ずるいんだよ昔から」

手についた塩を払いながら、食べ終えた健さんはやっぱりまた余計なことを考え始める。

遠い目をして、

「オモチャの取り合いしても泣きながら勝つのは俺で、負けたあいつはニッコリ笑って『いいよ』なんて言ってさ。

で、結局怒られるのは俺で、褒められるのは大樹なんだよ。なんでもそうだ」

悔しそうに愚痴を吐き出した。

「誰かから奪うくらいなら、自分が我慢した方がいいっていう、いい子ぶる、ずるい男なんだよ」

でもそう言う顔が、全然怒っていない。

そうすることに慣れてしまった大樹先輩の寂しさを一番よく知ってるのは、きっと健さんなんだ。

だから、強引な手段を取ったのかも。

「ナナも大樹も半分こできたらいいのにな」

やっと溢した健さんの笑みは、ちょっとだけ吹っ切れた風だった。

お腹が満たされると、少しは気分前向きになれるのかな。

「嫌ですよ。上半身だけとか怖いし」

だから私もいつも通り言い返してみる。

「そういう意味じゃないだろ。んじゃさ、振られたもん同士くっついてみる?」

「は?」
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