Bloom ─ブルーム─
だって、ナナさんは私よりずっと華奢だったから……そう言おうとしたら

「ナナ……」

私より先にナナさんの名前を口にしたのは、健さんだった。

健さんの視線の先に顔を向けると、横断歩道を渡りきってマックの入口に足をかけた淡いピンク色の傘を持つ女の子が見えた。

傘を閉じて出てきた顔は、ナナさんとその友達。

てか、このマック、ちょうどライブ帰りに都合のいい場所だから、ライブハウスにいた人達が他にもいたのかも。

よく見れば前のバンドの衣装を真似した奇抜な格好をした人達があちこちに座っている。

もしや、私達大きなミスをおかしてしまったのでは?

振られ組は、もっと人が寄り付かない場所で身を隠すべきだったんじゃない?

でも、そんなのお構い無しという感じで、健さんは立ち上がると

「ナナッ」

すでに彼女の名前を呼んでいた。

気づいたナナさんは困ったように俯く。

それでも気にしない健さんは「大樹は?」って聞きながら彼女を迎えに行くと、その手を引いてこっちへ連れて来た。

戸惑ってるナナさん。

私だって連れて来られても困るんですけど。

淡いピンクが近づくと、それは小花柄だったと気づく。

そんな傘さえも、可愛いなんてずるい。

一か八かで傘を持たないっていう選択も、彼女は絶対しないんだ。

ナナさんと友達は私達の隣の2人席につくと、同時に私に視線を向けた。
< 194 / 315 >

この作品をシェア

pagetop