Bloom ─ブルーム─
最初から健さんが間に入らなければこんなにこんがらがることもなかったのでは?

でも、好きな人がいると知ってて好きになってしまった私は、健さんと同じだ。

人の事とやかく言える立場じゃない。

「けど、今朝電話するまでナナがまだ大樹を忘れてなかったなんて……思いもしなかったよ」

はぁ、と深いため息をついた健さんは「くっつくなら早いとこくっついてくんないと、俺だって前に進めないじゃん」って寂しそうに笑う。

「だって……もしまだ気持ちが残ってるなら追いかけて来てくれるはずでしょ?やっぱり、もう無理なんだよ」

大きな瞳から涙をポロポロ溢す彼女は、泣いても天使みたいにキレイだった。

「追いかけて来なかったの?見失っただけじゃね?探しながら今来るかもしれないじゃん」

健さんは立ち上がると、窓に顔をくっつけて外を見る。

目を凝らして大樹先輩の姿を探しているようだった。

「来ると思って私もわざとナナを引っ張ってゆっくり歩いて来たんだ。相当のんびり歩いたつもりなんだけど」

友達が口を開いた。

「でも来るかもしれないじゃん」

健さんの言葉に

「すぐ来ないのは、迷いがあるからでしょ?」

ナナさんが答えた。

フーッとため息ついてまた席につく健さん。

ねぇ、なんで?

なんで追いかけない大樹先輩を責めるの?

どうして逃げたの?

そう考えると、いてもたってもいられなくなった私は気づくとその気持ちを声にしてしまっていた。
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