Bloom ─ブルーム─
「どうしたんですか?」

「んー……もしさ」

コーヒーを一口飲み、それをテーブルに置くと、今度はミサンガをつけてる私の腕をつかみ、自分の方へ引き寄せる彼。

「これで来たら、俺は脈ありと思うんだけど」

「は?」

何のこと?

そして、テーブルを挟んで中腰にさせられた私の口元に、さっき味わったコーヒーの香りを振りかける。

まるでそれは気持ちを落ち着ける麻薬みたいに。

「絶対触れないからそのままでいろよ」

「何するんですか?」

「いーから。動くなよ?大事な確認作業だよ」

上着を被ってるから周りの様子はまるでわからないけど、でもこの体勢はどう考えても不自然じゃない?

それでも全く気にしてない風の健さんは顔を傾けるとその唇を確実に私の方へ近づけてくる。

触れないからとか言われたって!動くなって言われたって!

落ち着く麻薬を吸い込まされたって!

こんなの平気でいられるほど、男馴れしてないんですけど!

無理!

我慢の限界で、ついに健さんを突き返そうとしたとき。

突然、誰かが私の腕を引いた。

その弾みで、触れそうだった健さんの唇が横にそれる。

「何やってんだよ?」

そして、私の心を一瞬で震わせる声が横から聞こえてきた。
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