Bloom ─ブルーム─
「うん。女の子ね。ついに居場所なくなっちゃったとでも思ったんじゃね?学校辞めて、東京でも行くつもりかな」

「東京?」

「同じ音楽仲間で、今年卒業して東京行った先輩がいるんだ。あ、明宏の女の弟なんだけど。

コネでスタジオとかも安く借りれたしすげーお世話になった先輩でさ。

お前らも早く東京来いよって言ってたから、先輩のとこ行くつもりなのかもね」

「で、でも、……ナナさんは?」

健さんは私の質問に

「さぁ~……どうかな」

なんて含み笑いを返す。

大樹先輩、もしかしてナナさんも置いて、出ていくつもり?

それで健さん、またチャンスとか思ってる?

先輩が、この学校からだけじゃなくて、この町からもいなくなっちゃうなんて。

「新しい母さんもさ、産んだら出てくって言ってたみたいだし、どーなるんだろうね?長谷川家」

「お母さん出ていっちゃうんですか?」

「さぁ。でも、元々一緒に住む気はなかったみたいだし。

あのオバサンさ、長いこと愛人してて、結構本気で尽くしてたらしいんだ。

だからって許されない事をしてきたわけだから、大樹からしたらムカつくんだろうけど。でも俺はなんかわかるっつーか。

何度も別れようとしたらしいし、今回も出来ちゃって、堕ろそうとしたのを親父さんに見つかって、結局無理に家に連れて来られたらしくて。

籍も入れるの今は断ってるんだって。なんかさ、そういうの聞くとあのオバサンだけ恨むのも違うじゃん?って、そんなこと大樹には言えないけどさ」
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