Bloom ─ブルーム─
久しぶりだ。

大樹先輩の顔をこうして見つめるのは。

本当になくなってる揉み上げ。

でも、それもオシャレかなとさえ思えてしまうから不思議。

近くにいた友里亜も驚いた顔をして振り返り、山本先輩はニヤッとして自転車をこぎだした。

私を心配そうに見つめる友里亜が遠くなっていく。

息をもう1度整えると、私は大樹先輩が待つ場所まで再び走った。

そして、複雑な顔してる先輩に言う。

「先輩、自転車貸してください」

「へ?」

「いーから!」

ボケッとする先輩に話したいことはいっぱいありすぎる。

久々に彼を目の前にして、心臓ははち切れんばかりに鳴り出すし。

でも、躊躇ってる場合じゃない。

て言うか、躊躇ったらきっと動けなくなる。

先輩から自転車を奪うと

「後ろに乗って」

「は、い?」

戸惑う先輩を後ろに乗せて自転車を走らせた。

久々の自転車は、やっぱり走るよりも満員バスよりもずっと気持ちいい。

向かい風が短い髪をふわふわ持ち上げる。

そして、友里亜達とドラムをあっさり抜かして走り去る。

きっと友里亜はこの光景を唖然として見てることだろう。

私だってこの状況信じられないし、本当は怖くてたまらないんだ。

こんな勝手なことして、先輩が笑ってるとは到底思えないし。

怒ってるにきまってる後ろを振り返る勇気なんてない。

何も言わないし、何も聞かない彼。

ただ、肩に乗せられた手が、妙に熱かった。
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