Bloom ─ブルーム─
お互い風と車の音だけを聞きながら、ぐんぐんとたくさんのチャリ通達を抜かして進む。

杏奈に無理矢理引っ張られながら、ちょうどバスを降りた直人の横も走り抜けた。

そして、自転車を15分ほど走らせた時、健さんから聞いた交差点に到着。

信号の手前に、ピンク色の建物がある。

『ウイメンズクリニック』と書かれているのを確認すると、その駐車場で自転車を止めた。

黙って自転車を降りる先輩。

私は恐る恐る顔を上げ、先輩の表情を確認した。

やっぱり、そこには不機嫌そうな彼がいるだけだった。

そして

「悪いけど、ここが目的地なら俺帰るわ」

ひどく低い大樹先輩の声が私をさらに落ち込ませる。

完全に嫌われた。

でも、もうすでに嫌われてるも同然。

困らせるのわかってて泣き落としみたいなことしちゃったんだから。

今さら失うものなんて何もない。

底辺見てるんだから、これ以上落ちることもない。

それなら、負けるな私!

「逃げるの?」

「は?」

「親からも、妹からも、友達からも学校からも逃げるの?」

“逃げる”と口にした途端、険しかった大樹先輩の表情がさらに険しくなった。

「何のことだよ?」
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