Bloom ─ブルーム─
なんて小さいんだろう?

よくテレビCMとかで見る赤ちゃんとは別物だ。

しわくちゃで、小さいおじいちゃんみたい。

あ、女の子だったっけ。

でも、性別なんて関係ないと思わせるほどの命の尊さを感じる。

こんなに小さいのに爪だってシワだって、手相だってあるなんて。

こんなに小さいのに私と同じ心臓がここにあるんだ。

そっと手に触れると、細い指がキュッと動いて、私の添えた手を握り返してくれた。

「せ、先輩、握った。握ってくれた」

感動して、さっき言い合ったことも忘れて、思わず先輩を呼んでしまう。

でも、顔を上げてやっとその場の状況を把握した。

大樹先輩は複雑な表情のまま赤ちゃんを見下ろしてるだけで。

お母さんはそんな先輩を見つめて涙を流していた。

「来てくれるなんて、思わなかった」

そして「ごめんね」と、絞り出すようにお母さんの口からこぼれ落ちる謝罪。

大樹先輩は黙ったままだった。

「先輩、赤ちゃん、握り返してくれました」

「……」

「握り返して、くれるんですよ?」

「……」

しわくちゃの小さな小さな指の、どこにそんな力があるんだろう。

どうしていいかわからずに、赤ちゃんを見つめていると、先輩は私の指のとなりに自分の指を差し出してきた。

そして、赤ちゃんの手に触れる。

私が手を引っ込めると、先輩の指は、ギュッと赤ちゃんの手のひらの中に隠されてしまった。
< 231 / 315 >

この作品をシェア

pagetop