Bloom ─ブルーム─
玄関で靴を履きながら、私はまだ目の赤い友里亜に言った。

「ねぇ、友里亜。

振られた立場から言うとね、振った方が遠慮して幸せになれないのは悲しいし、そんなことされたら余計にこっちが惨めになるんだ」

あのライブの時の健さんと同じ。

好きな人が自分に遠慮して踏み出せないのを見たいわけないんだよ?

もし、私のせいで、ナナさんと大樹先輩がうまくいかなかったとしたら、そんなの絶対嫌だもん。

「だからもし、自分の気持ちにちゃんと気づいたなら、素直になってね。じゃないと、山本先輩の気持ちも報われないよ?」

そして扉を開くと、慌てて門に隠れたその人に向かって、今度は私が偉そうに言ってやる。

「そういうのをね、未練がましいって言うの、知ってた?直人」

そしたら、申し訳なさそうにヒョッコリ顔を出す、さっきまでウロウロしてた人。

でも、1番驚いたのは、友里亜だったみたい。

「どうして?里花が呼んだの?」

「私?ううん。呼んでない呼んでない」

私の策略だと思われちゃ困る。

まだ気持ちの整理ついてない友里亜をさらに揺さぶれるほど無神経じゃない。

でも、直人が勝手に動き出したなら、少しは直人の力になってやってもいいかな、なんて。

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