Bloom ─ブルーム─
「あ、あのさ、友里亜、山本先輩に何かされたのか?」

「え?」

「さっき……泣いてたから」

結局、いつまで経っても友里亜しか見えてなかった直人。

友里亜の涙が気になってここまで来たんだ?

なのに、友里亜ったら

「な、直人には関係ないよ。平気だからほっといて」

なんて言う。

直人の前では意地っ張りになるんだから、不思議。

けど、いつになく真面目な顔をした直人は

「ほっとけないよ」

呟くように言った。

「ほっとけたらどんなに楽かと思うけど、ほっとけないんだよ」

「だって、直人には杏奈ちゃんがいるでしょ?今日も杏奈ちゃんの家に行ったんでしょ?

は、鼻の下伸ばして嬉しそうに帰って行ったじゃない」

「は?俺がいつ鼻の下伸ばした?見てないくせに勝手なこと言うなよ」

「見てるよ!いつも、手鏡に映る2人が楽しそうに笑ってるもん」

友里亜……髪を整えるふりして、直人を見てたの?

「──俺を、見てたの?」

プイッとそっぽを向く友里亜に、少し期待した風な直人。

よく見れば、友里亜は、目だけじゃなくて、頬もほんのり赤く染めている。

「山本先輩とは、さっき別れたみたいだよ」

私が言うと、直人はさらに期待を膨らませた顔をして、目の前の女神を抱き締める準備を始めた。

パシッ!

なのに直人の伸ばした手を、汚らわしいものを見るような目で見て、本気で振り払う友里亜。

「友里亜、どっち?」

思わず直人より先に、私が声を上げてしまった。

好きなの?嫌いなの?

直人も、振り払われた手を切なげに見つめてる。
< 246 / 315 >

この作品をシェア

pagetop