他人格的適合者(タジンカクテキテキゴウシャ)『短編』
「雇い主は…多分…」

政は台詞を繰り返す。

「誰だ?」

純一郎の眉が、跳ね上がる。



「猫好きだと…」

政の報告に、

「あり得ん!」

純一郎は叫んだ。

「ただの猫好きでは、雇えないぞ!ちゃんと、毎日遊んでいるか!あげてる餌のバランス…種類など……。ニャンコの助け団の依頼者になるためには…半年以上の審査を通らないと…」

興奮する純一郎に、政は言った。

「多分…並の猫好きでは、ございません」




突然、グラウンド側の窓硝子が割れ、上から、トラガラの迷彩服を来た男が、教室内に飛び込んできた。

「もらった!」

両手についた鋭い爪を、俺に向けて、飛び掛かってくる。

「舐めるな!」

純一郎の右ストレートが、空中のトラガラを撃墜した。

「てめえらが、猫なら…俺は、お嬢様の番犬よ」

純一郎が吠える。

吹っ飛んだトラガラは、倒れながら通信機をつかむ。

「トラより…タマへ…。敵は…犬好き…」

ガクッと首を落とし…トラは気を失った。



「何だ?」

訳がわからない…いきなりの展開に、戸惑う俺のそばにいた生徒が呟いた。

「またか…」


「え?」

後ろから聞こえたので、俺は振り返ったが、

生徒は、みんな下を向いており、誰が言ったか…わからない。

「とばっちりだぜ…」

今度は、前から聞こえ、

振り向いたけど、やはりみんな顔を伏せている。

教壇の前の教師もだ。




「皆殺しじゃい!」

1人…純一郎が、教室の中心で叫んでいた。
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