たなごころ―[Berry's版(改)]
予想できなかった現状と。浅はかな自身の失態による羞恥心に、笑実の頬の温度は上がる。触らなくとも、笑実自身にはそれが分かった。
「怪我はないか?」
「あ、ありがとうございます。私はなんとも。箕浪さんも大丈夫ですか?」
「ん」
端的な返答の後に訪れる沈黙。これ以上は用のないはずの体勢であるにも関わらず。笑実を拘束する箕浪の両腕が、緩む気配は一向に見られない。
館内の、人通りが少ない箇所と言える場所ではあるが。笑実の自身の職場でもある。知人が多いこの場所で。誰かの目に留まる可能性を考えると……羞恥心との相乗効果で。笑実の心臓はこれ以上ないほど早く、全身で鳴り響く。
とりあえず。現状を打破するため。笑実は箕浪の腕を解こうと、目の前にある彼の胸を押した。だが、それに反して。箕浪の両腕には更に力が込められる。
戸惑いながらも、笑実は箕浪に問う。
「どうしてここに?」
「怪我はないか?」
「あ、ありがとうございます。私はなんとも。箕浪さんも大丈夫ですか?」
「ん」
端的な返答の後に訪れる沈黙。これ以上は用のないはずの体勢であるにも関わらず。笑実を拘束する箕浪の両腕が、緩む気配は一向に見られない。
館内の、人通りが少ない箇所と言える場所ではあるが。笑実の自身の職場でもある。知人が多いこの場所で。誰かの目に留まる可能性を考えると……羞恥心との相乗効果で。笑実の心臓はこれ以上ないほど早く、全身で鳴り響く。
とりあえず。現状を打破するため。笑実は箕浪の腕を解こうと、目の前にある彼の胸を押した。だが、それに反して。箕浪の両腕には更に力が込められる。
戸惑いながらも、笑実は箕浪に問う。
「どうしてここに?」