狂奏曲~コンチェルト~

「貴女が二度と現れなかったら、翼は貴女のことを忘れられたかもしれないのに! 翼と一緒にいられたのに!」

 二度と……?

 呆然としている私は、冴島さんの言っていることに反応できない。

「五年間一緒にいたのはあたしだったのに! あたしが翼の隣にいたのに! 翼は貴女のことしか考えてなかった!」
「……?」
「翼は貴女のせいで色まで失って、髪の毛も白くなっちゃったのに、なんで貴女は平然と翼と一緒にいるの!」

 この人は、いったい何を言ってるの……?

「ふざけないでよ! 貴女さえいなければ、翼は幸せになれたのに……っ」

 冴島さんは、憎しみに満ちた目で私を見て、

「翼のこと覚えてなんかないくせに!」

 そう言い残してその場を去っていった。

 冴島さんに叩かれた左頬が、今になってジンジンと痛み出した。

「どういう……こと……?」

 混乱する頭で、考える。
 冴島さんの言葉は、昔から私のことを知っているかのようだった。

「私……」

 私が、翼のことを覚えていないと言っていた。
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