狂奏曲~コンチェルト~


 ごめんな、かなめ。

 俺との記憶の中に、かなめにとって幸せな記憶があったのかもしれない。
 辛いあの出来事だけじゃなくて、幼い頃の何のただただ幸せだった頃の記憶。

 俺は、それも奪ってしまったんだな。

 かなめ、それでも、俺はお前と一緒にいたいんだ……。




 ベッドの上で、私はさっき見えた映像について考えていた。


 私の頭をなでる、男の子。
 その子と一緒にいる私は嬉しそうで。
 それでいて男の子は少しだけ寂しそうだった。


「お兄ちゃん……じゃない?」

 ずっと、この映像に出てくるのはお兄ちゃんだと思っていた。
 だけど、もともとその顔ははっきりと見えない。

 私の近くにいた男の人は、お兄ちゃんだったから、私は勝手にお兄ちゃんだと思い込んでいた。

 お兄ちゃんじゃないとしたら、いったい誰なんだろう?

「翼……?」

 でも、翼は大学で初めて会ったって言ってた。
 翼が、嘘をつく理由が思いつかない。

「なんで、私は忘れちゃったの?」

 強姦に遭ったせいのショックで?
 でも、なんでその人だけ……?

「貴方は、誰……?」

 私の胸に聞いても、なんの答えも出てこない。
 でも、なんとなく、思い出したいと思った。
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