狂奏曲~コンチェルト~

 私が忘れてしまったその記憶が、大切なものだったような気がして。
 確証はない。覚えていないんだから。

 だけど私が感じていた、何かが満たされない感覚。
 何かが欠けているような、空虚な気持ち。

 その気持ちの説明が、その記憶でつくような気がした。

「思い出したいな……」

 私のそんな想いが、まさか彼を傷つけることになるとは、今の幸せな時間を壊してしまうとは、気づいてなんかいなかった。





『私、引っ越す前に翼に出会ってる?』

 かなめ、なんでそんなこと言い出したんだ?


 かなめと一緒にいられることに浮かれて、ないがしろにしていた俺の犯した罪。
 忘れていたわけではない。
 許してもらいたいと願ったわけではない。

 だけど、かなめが思い出さなければいいと願っていた。
< 169 / 301 >

この作品をシェア

pagetop