狂奏曲~コンチェルト~


 ぼんやりとしながら歩いている俺に、心配そうについてくるほのか。

「ねえってば」

 ほのかが呼びかけ、そちらを向いたとき、

「あっ」

 俺は誰かにぶつかってしまった。

「すみません」
「ごめんなさいっ」

 彼女が落としたかばんを手渡した瞬間、俺は硬直した。

 心臓を鷲掴みにされたような衝撃に、呼吸も忘れた。
 色を移さなくなった灰色の瞳を見開いた。
 自分で自分の目が信じられず、呆然とする。
 時間が、止まったように感じた。

「か……なめ……?」

 驚いたように俺を見た彼女は、灰色の視界の中でも色あせることのない――かなめだった。

 どくんと、異常に心臓が暴れだす。
 まん丸の瞳を見開いて戸惑ったように俺を見ているかなめ。
< 33 / 301 >

この作品をシェア

pagetop