狂奏曲~コンチェルト~
「翼」
再会したときに交換した連絡先。
俺は有紀を呼び出していた。
場所は工学部の図書館だ。
「何で言わなかった」
この時間帯、図書館を利用するものは少ない。
それでも俺は二階席の一番奥の古い書物ばかり置いてある一際人気のない場所を選んだ。
「なんのことだ?」
「とぼけるな」
有紀は勘付いているはずだ。
俺がかなめを見たことを。
「かなめがこの大学に通ってること、なんで言わなかった」
「お前が訊かなかったんだろ」
そんな有紀の言い分をもどかしく思う。
眉をしかめて口を閉ざした俺に、有紀が気遣わしげに俺の顔を見た。
「会ったのか、かなに?」
もちろん、有紀が心配しているのはかなめのこと。
「さっき、構内で」
「そっか」
「男と一緒だった」
有紀は何か考えるように俯いた後、
「かな、お前を見てどんな反応した?」
一番、訊かれたくないことを訊いてきた。