狂奏曲~コンチェルト~
「お兄ちゃん」
「っ」
やってきたのは、戸惑いの表情を浮かべたかなめだった。
目を見開いて、俺はかなめを見る。
「工学部なんて初めて入ったよ。あ」
かなめは俺を見て、笑いかけた。
「お兄ちゃんの友達だったんですか」
「なんだ、かな、知ってるのか?」
「うん、さっき私の名前知ってたから、どうしてかな? って思ったんだ。お兄ちゃんの友達だったんだね」
胡散臭いような有紀のせりふにも、かなめは微笑んだ。
俺は衝撃から立ち直った――ようの自分を納得させて、
「ああ、有紀から、君の名前を聞いていた。さっきはごめん。有紀に顔が似てたから」
「似てるかな?」
暴れる心臓を抑えるように、普通の笑顔で話しかける。
そんな落ち着いた外見とは裏腹に、中身は煮えくり返るような想いを抱えていた。
「あ、改めて、本郷かなめです」
「二階堂翼……」
物覚えのついた頃から知っている名前。
わざわざ自己紹介されている自分が、むなしくなった。