狂奏曲~コンチェルト~
「うちの学科の教授に、資料を届けるように頼まれたの」
ちょっとだけ二階堂さんに見とれながら、私は答えた。
すると二階堂さんは破顔して、
「それなら、案内する」
「あたしも一緒に行く」
ほのかさんも一緒についてきた。
さっきから、凄く睨まれているけれど……私、何かしたかな。
「かなめは、どこの学部なんだ?」
遠慮がちに二階堂さんが尋ねてきた。
「理学部だよ。専攻は化学」
「そうか……」
そう言ったっきり、二階堂さんは黙ってしまった。
寂しげな横顔。そんな二階堂さんに仕切りと話しかけるほのかさん。
「二階堂さんは、私のこと、かなめって呼ぶんですね」
私の言葉に、二階堂さんがはっとして私を見た。
初めて会ったときから、二階堂さんはかなめと名前で呼んでいる。
話を邪魔されたせいか、ほのかさんが思い切り睨んできた。
それに私は怯む。
「……いつも、有紀から話を聞いていたから」
二階堂さんが、ぽつりと言った。
「副島教授の部屋はここよ」
ほのかさんの棘のある声が私達の間に割って入った。