狂奏曲~コンチェルト~
「あ、ありがとうございました」
二階堂さんが微笑む。
私はぺこりと頭を下げて、部屋に入った。
部屋から出ると、二人ともいなくなっていた。
二階堂さんの表情が忘れられなかった。
とても寂しげに、遠慮がちに私を見る目を。
時折、青く光る、灰色の瞳を――。
「翼、あの子には関わらないほうが良いんじゃないの?」
かなめが副島教授の部屋に消えたあと、ほのかが言ってきた。
「あの子、翼のこと覚えてないんでしょ?」
「……ああ」
「なら、思い出さない方があの子の幸せなんじゃないの?」
ほのかの言葉に、俺は歩き出す。
「待ってよ」
ほのかの言葉は、正しいと思う。
かなめとは関わらない方が良い。