狂奏曲~コンチェルト~

「別れてねぇよ」

 俺達は別れたわけじゃない。
 もともと付き合ってないのだから、俺の言葉は真実だ。

「そうなの? それじゃあ喧嘩したの?」

 私が慰めてあげるとばかりに近づいてくる女に、吐き気がしそうになった。

「お前に関係あるのか?」
「えっ」

 冷たい言葉を吐いて、俺はその場を後にした。
 食堂に向かってあるいていると、かなめの姿を見つけた。
 女友達と一緒に、食堂へと向かっているところだった。
 少しだけ歩く速度をあげると、すぐに追いついた。

「かなめ」
「えっ、あ、二階堂さん」

 驚いて振り返ったかなめと、驚いたような視線を向けるかなめの連れ。
 かなめは首をかしげて、

「冴島さんは一緒じゃないの?」
「俺達がいつでも一緒にいると思ってるのか?」

 俺が笑うと、かなめも微笑んだ。

「ねえ、かなめ、この人誰?」

 かなめの連れが、小声でかなめに尋ねた。

「えっと」
「二階堂翼です。初めまして」
「えっ、えっと、日野香織です、どうも」

 日野さんは驚いたように自己紹介した。

「今からお昼?」
「うん。二階堂さんも?」
「ああ」

 かなめはにっこりと笑うと、

「一人なら、一緒に食べない?」
「でも日野さんが」

 視線を向けると、日野さんは真っ赤になってぶんぶんと首を横に振り、

「全然気にしません! 一緒に食べましょう」

 と、元気よく言った。
 小動物のようなその動きに、思わず微笑んでしまう。横目で見れば、かなめも微笑んでいた。
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