狂奏曲~コンチェルト~
柄にもないとか、そんな要らないプライドは捨てることにした。
「よう、翼」
「おはよう」
朝、俺のアパートの前に乗り付けたのは、有紀の車。
「翼君、おはよう」
かなめが、助手席の窓から笑いかける。
俺は、それに笑って応えて、後部座席に乗り込んだ。
俺が有紀に頼んだこと、それは一緒に登校する事だった。
有紀達の家と大学の間に、ちょうど俺のアパートがあったからなせた業だった。
「お兄ちゃん寄り道するからどうしたのかと思ったら、翼君拾うためだったんだね」
「拾うって、どこかの犬みたいだな」
「あ、そんな意味じゃなかったの、ごめんね!」
慌ててそう言うかなめが可愛い。
「家も近いし、最初の授業の時間も同じだし、これから毎日拾うからな」
「さんきゅ」
理学部と工学部は一応立地的には隣だが、距離がある。
意図的に会おうと思わない限り、なかなか会う機会がない。
だから、俺はこの些細な時間を有紀に頼んだ。
ほんの数分、かなめと同じ時間を過ごせるだけでも、俺は幸せだ。
だけど俺は、少しでもかなめに近づきたい。