狂奏曲~コンチェルト~



 その日一日、私は上の空だった。

「かなめ?」
「…………」

 新が心配そうに私に声をかけるけど、私は翼君のことばかり考えていた。

 冴島さんに冷たいといっていいくらいの態度を見せていた翼君。
 きっと、翼君は冴島さんの気持ちに気づいていたはずだ。
 だけど翼君は〝彼女〟のことが好きだから、冴島さんの気持ちには応えられなかったんだ。

「かーなめ?」
「え……?」

 私はきょとんと新を見た。

「何?」

 新は大げさに肩をすくめて、

「ぼーっとしてて、何回も呼んでんのに返事なくてさ。そんで、何? とか傷つくんだけど」
「え、ごめんね?」

 私はため息をついた。
 新はふと真顔になって、

「何か悩んでるのか?」
「へっ?」

 新は哀しそうに、

「俺、一応かなめの彼氏なんだけど」
「知ってるよ?」
「悩んでるなら、相談くらいして欲しい」

 新の真っ直ぐな言葉に、余計胸が苦しくなる。
 私は、新を裏切っている。

 罪悪感が、心の中に巣食っていた。
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