シュガーレスキス
「元気だった?」
「うん……って言いたいけど。元気では無かったかな」

 話すと長くなる事だったけれど、一応ここ数週間で起きた信じられない事の数々を説明した。
 健太の中では、私と聡彦が付き合う事になって、ツンのせいで二人きりでは会えなくなった……っていうところぐらいまでしか情報が入っていない。
 だから、私の話した事を最初は「嘘だろ!?」なんて言ってなかなか信じてくれなかった。

「菜恵ちゃん痩せて見えたから、何か病気でもしてるのかと思ったけど。そういう訳だったのか」

 食前酒の赤ワインを少し口にしてから、健太はそうつぶやいた。

「うん。健太もビックリだよね。夢の世界で楽しんでた方がやっぱり気楽だったよ。現実の恋っていうのは、相当複雑だよ。“好き”だけでは進まない事も多くて……他人の心っていうのは、本当にコントロール出来ないんだなって思い知ってるよ」

 私は炭酸水を飲んで、はあっとため息をつく。

 沢村さんには聡彦を諦めてもらいたいけど、下手な事を言ったら彼女の心はますますエスカレートする可能性を感じて口にできない。
 そんな事を言わなくても、聡彦の心を確かめられれば……それだけでいいんだけど。

「……菜恵ちゃんに出来るかどうか分からないけど」

 健太がサラダをつつきながら、ちょっと深刻な顔をした。

「何?」
「一度そのツンデレを突き放してみれば?」
「……え?」
「もう気持ちはあんたには無いんだって演技してみれば……少しは本心が分かるかも」

 そんな事想像もしてなかった。
 愛情は少しずつ彼から送られるものだけで確認しようとしてたし。
 でも、あまり長い時間不安を抱えるのは自分の為にも赤ちゃんの為にも良くないとは思っていて……。
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