麗しの彼を押し倒すとき。
私はのんきにパンに噛り付くこーすけを、少し恨めしい気持ちで見つめた。
こう見えて彼は私の一つ上なのだ。
とても来年から大学へ進学するとは思えない。
「よっしゃー!手に入れたぜ限定パン!」
照れを隠すためおにぎりにかぶりつくと、教室の扉が勢いよく開いて、波留くんが嬉しそうに片手を上げて入ってきた。
その手には何やら袋が握られている。
「あ、柚季っち来てたんだ!みてみて俺今日頑張った!」
私を見つけるといつもの笑顔で駆け寄ってきた。
なるほど。これに女の子は騙されるんだな。
不覚にも少し高鳴ってしまった心臓にそんなことを思いつつも、波留くんが差し出した袋の中を見る。
そこにはなぜか大量のパンが入ってあった。
「グラタンパン……?」
「そう!それ一日限定5個しか売ってないから、ちょー必死になって手に入れた」
その中の一つを手にとって持ち上げると、波留くんが興奮気味に伝えてきた。
だから4限目だけいなかったのか。
朝からいなかった椿はともかく、波留くんは3限目終わって教室から出て行ったきり、戻って来なかった。その理由が限定パンを手に入れるためだと知り、そんなんで単位は大丈夫なのかと心配になる。