麗しの彼を押し倒すとき。


さらに遡ると、『BBQ今日だから!俺と棗と凪は買い出し班!』の文字。


液晶から顔を上げ椿を見ると、「そう言うことだから」とスマートフォンを取り上げられた。


……いや、どういうことですか。

真っ先に聞きたいのはその言葉。

だけど椿はあのLINEだけで、私が全ての状況を理解したと思っているらしい。

なぜか隣に停めてあった自転車のスタンドを解除すると、「早く乗って」短く私に指示した。


いやいやいやいや。
待ってくださいよ椿さん。

世の中の全ての人間があなたと同じように、頭の回転が速いと思わないでほしい。

残念だけど、あんな短いLINEで状況が把握できるだけの賢い頭脳を私は持ち合わせてない。



「ちょっと待って!BBQってなに!」

「なにって……バーベキューに決まってるだろ」


呆れたように椿が言う。

いや……それはいくら何でも私をバカにしすぎだ。

ビービーキューと書いてバーベキューと読むことくらい、さすがに私にだってわかる。


「そういうことじゃなくて、何でバーベキューかって聞いてるの!」


バカにされすぎたせいか少し強く言った私に、椿が面倒臭そうに鼻から息を吐いた。



「いいから、取り敢えず乗って」

「わっ!ちょっと待って!」


半ば強引に手を取られ、自転車の後ろへと乗せられる。

そのまま私の手を自分の腰回りに引き寄せると、椿はさっさと自転車のペダルに足をかけ漕ぎ始めてしまった。

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