麗しの彼を押し倒すとき。


どうしてこうも彼らは、すぐに私を拉致するんだろう。

強引に乗せるものだから、勢い余って椿に抱きつく形になってしまった。

漕ぎ始めて少したった自転車は既にスピードが出ていて、今更手を離すなんてことはできない。

仕方ないとはいえ、私の心臓は落ち着かなかった。


よくよく考えれば幼なじみと言えど、彼らはれっきとした男なのだ。

別にこの中の誰かとどうにかなるとは思わないけれど、恋愛偏差値が果てしなく低い私にとってここ数日は心臓に悪いことばかり起きている。

昼間の凪の一件だってそうだ。

あんな風に不意に触れられたり力の差を感じると、急に自分が女なんだと自覚して心が落ち着かなくなる。

そして昔のみんなを知っているからこそ、よりそんな気持ちが働く。

お願いだから、私の想像の範囲を越えて成長した姿を見せないで欲しい。




「こ……ここは?」

「俺の家」


目の前に広がる光景に息を飲み聞くと、当たり前といった感じで、椿が短く答えた。

もやもやした心を引きずりながら連れて来られたのは、私が一生働いてもローンさえ組めないような豪邸。

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