麗しの彼を押し倒すとき。
「入れよ」
「う、うん……」
立ち尽くしていた私に、家の門を開きながら椿が言った。
敷地の中には手入れされた庭まで存在して、現実離れしたその光景に軽くめまいを起こす。
……たしかに、記憶は曖昧だけど昔から椿の家は大きかった。
小さいころ何度か遊びに来て、家の広さにとてもはしゃいだのを覚えてる。
それに家が代々続く一条グループの一部らしく、家系からして凄いというのは知っていた。
けれど。
「なんか……家おっきくなってない?」
「あぁ、5年前くらいに建て直したからな」
さらりと口にした椿の言葉に、目ん玉が飛び出るかと思った。
やっぱり凡人とは違う。
椿の話からすると、まだ普通に住める家を壊し、その上にもう一度家を建てたとのこと。
やはり子供の頃の記憶は、全くアテにならない。特に私の記憶は尚更だ。
「すっごー……」
「そうか? 昔来た時もこんなだっただろ」
よりパワーアップしている気がするけれど、どうやら小さい頃の私の認知が甘かっただけで、椿の家は変わらず凄いらしい。
「あ、手離すなよバカ!重い重いっ腕ちぎれる!」
「うわっ暴れんな!」
門をくぐり抜け、手入れされた芝の上をしばらく歩くと、複数の騒がしい声が聞こえてきた。
姿が見えなくても誰だか分かるのは、ここ数日ほぼ毎日、私が彼らと会っているからだと思う。